清水宣晶伝

清水氏と朝

すっかり清水宣晶特集だ。

“スピードの哲人”清水宣晶のお宅に泊まる時は

彼が寝室で己はキッチンに布団を敷いて寝る。


南向きのキッチンに朝日が入ってきてとても気持ちいい。



目覚めると己は冒険王の顔つきになる。


なぜなら、晶はちょっとした物音に反応し、

武士のように起きてきて

「おはよう!行ってらっしゃい!」

と飛びかかってくるからだ。


今日こそは奴を寝かせたままにする。



晶の家の構造を紹介しよう。


キッチンから玄関までは廊下一本で結ばれているが

その間、左に晶の寝室がある。

右には洗面所とトイレだ。



関門は3つ

ひとつはキッチンと廊下のしきりにあるガラス戸

ふたつは寝室前をとおる時

みっつが玄関扉だ。



このみっつと、あともちろん廊下で足音を立てないように

気をつけなければならない。


しかし、この挑戦が難度を極める最大の理由は

人が泊まると寝室のドアを開けて寝るという晶の習性にある。

この習性は明らかに、朝目覚めた宿泊客にとびかかる意志から生まれている。

これまで何人の宿泊客が犠牲になってきただろう。

己ももちろん、その犠牲を強いられてきた宿泊客の1人だが

辛うじて今日まで生き延びてきた。



今日こそは絶対に彼を寝かせたままこの館から生還する。



己は自分のバッグをかついでぎゅっと口を結ぶ。


ジャングルで眠っている虎をみつけてしまったような気分だ。

あるいは眠っているライオンヘッドに出会ってしまった
ポップとダイだ。
(べ、ベギラマがくる…)


征くぞ


とその時、大便意をもよおす。


普段はもよおさないのにこういう時に限って!


トイレに行くという関門が増えてしまう。


己はバッグをおろし、便意を我慢しながら

第一関門のガラス戸を静かに開けるべく手を掛ける。


その時、背後のキッチンから朝の電車の音が大きく響く。


晶の家は駅間近の立地である。


電車の音はどんなに大きくても生活で慣れているから

寝ている彼には認識されない。


むしろ気をつけるはドアを開ける微かな音なのだ。

その微音こそが彼を起こすのだ。


電車の大きな音に慎重に同調させてドアをあけることに成功する。



第一関門突破


廊下を渡ってトイレに行く。

晶の家はフローリングの為、すり足がベストである。

トイレに滑り込んで用を足す。


流す水の音が不安だが、

流さずにおいて、後で起きた晶に流させるわけには流石にいくまい。

流さないのが流浪の多苗流だと流儀を主張したところで流血するのがオチだ。



覚悟を決めて水を流し、音が止まるまでドアをあけない。


水爆かなにかの爆発実験のような心境だ。


静寂を確認し、すり足でキッチンに戻り、バッグを構える。


第一関門は既にあいている。

次に、廊下歩行中に音を立てないことが課題だ。


いくらすり足でも体重は掛かる。

体重が掛かると床がきしんでしまう為、細心の注意を払う。


『ジョジョの奇妙な冒険』のノートリアスBIGという敵は、
動きに反応して攻撃してくる。

その敵と対峙した心境を伺い知る。

動いてはならない。

しかし目的に辿り着かなければならない。


「動イテハイケナイト言イマシタガ、シカシ実際ハユックリ動クノデス。
 時計ノ針ヨリユックリト。シカシ万力ノヨウナ力ヲコメテッ」
~『ジョジョの奇妙な冒険』スパイスガール~


心理的に迫っていた廊下の白壁がひらけて

晶の寝室が現れる。

しかし、そのひらけた方がより一層心理に迫る。

左足を前に擦った体勢そのまま、目だけを動かして晶を捕捉する。


晶は

寝息をかいている。


しかし、掛け布団に埋もって顔が見えない。

寝息だけが存在している。
布団は呼吸の蠕動に波打っている。

寧ろ、寝息がベッドに寝ている。
寝息がベッドの波乗りを楽しんでいる。

晶は今、寝息だ。



己は、右足を前に出す。

遠くで聞こえる電車の音を保険に足をさしだす。


額にはうっすらと汗がにじむ。


玄関だ。

玄関の鍵は開いている。

ラッキーだ。

靴を履く音にだけ気をつける。


背後を視ることができない。

視れば、それに反応して晶が目を覚ましてしまうような気がして。


いや

これでいい。

このまま後ろを振り向かなくていい。


オルフェウスも琴でプルートーを魅了しておきながら

最後の最後、振り向いてしまったがために

その愛妻エウリケディーケを永遠に失ってしまったのだから。


己はなんのためにここまで来たのだろう。

なぜ己は挑戦したのだろう。

晶にみつかってしまった時の言いようの亡い敗北感から逃れるためか。

清水邸の歴史に「初めて彼を起こさずに還った侠」として名を連ねるためか。

寝息を盗むという新しい窃盗に挑戦したかったためか。

ただ、そこに晶が寝ているから、か。

わからない。

いずれでもない。

いずれでもある。

己は今、最後の関門に立っている。



己はゆっくりと手練れの泥棒がダイアルを回すようにドアノブを回し

息をとめて体の体勢は直立にして崩さず、腕だけで扉を押し開け

外の空気が室内にはいる時の巨大な騒音のオーケストラを覚悟し

外に出るとふりむかずゆっくりと後ろ手で扉をしめた。


息を吐き出す。


意識が前を向くと、目の前には自由が丘の朝が広がっていた。

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清水氏とストⅡ

“スピードの哲人”清水宣晶氏のインタビューが終わって

格闘ゲーム大会が始まる。


己が清水邸で格闘ゲームをやる確率は8割9分3厘だ。

バーチャファイターは晶の方が強い。
鉄拳は己の方が圧倒的に強い。

ストⅡでふたりの力が拮抗し、それがとても面白い。


最初、ボコボコに敗けていたのだが

途中から盛り返す。

ラスト、超接戦の末、己が勝利した。

気分良く
「今日はありがとう。ごちそうさま」
「うん。またね」
と別れたら


終電が亡くなっていた。


泊まる。

ごめん。
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自由が丘から己の家までの終電は0:20
時計をみてほしい。
この時間から闘いがスタートすることに無理があったかもしれない。

清水氏インタビュー

NPO志の兼ね合いで“スピードの哲人”清水宣晶にインタビューをお願いする。

彼の「独立者」としてのスタンスをインタビューするのだ。

つっても、もう彼とは茶を呑み、酒を呑み、格ゲーをしながら
手広く語り合っているので

質問しながら答えが分かってるというアンチなインタビューであった。


でもでもでも

更に新しい発見がないこともないこともないこともない。


清水宣晶はオリジナルなので面白いのだ。

清水氏と寿司

“スピードの哲人”清水宣晶と
カレーを食べてお腹が一杯になったので

帰り道、寿司を食いに行くことにした。

いわゆるチェーンコンボと呼ばれる奴だ。


回らない寿司屋で内装がちょっと田舎っぽく
晶とふたりで静岡にでも旅行に来ている気分になれた。


晶とふたりで旅行というのも面白いかもしれない。

清水氏とカレー

NPO志の兼ね合いで“スピードの哲人”清水宣晶にインタビューを受けてもらう。

2人とも腹が減っていたので飯でも食いに行くかという話になる。

なのでインドカレーを晶におごってもらうことになった。

本格カレーなので

カレーで1200円

ライスで300円。


それをおごってもらう。

お忙しいところインタビューを受けてもらう。
腹が減っていたのでおごってもらう。


己は意味の分からない貧乏神だ。
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